パニック障害を自力で治すことは可能?受診の目安や具体的な対処法について解説

公開日: 2025/07/14 更新日: 2025/07/14
「パニック障害って薬を飲まなくても自分で治せるのかな?」 「自分でパニック発作のつらい症状を治すためには、どんなステップで対策したらいいんだろうか?」 パニック障害による急な動悸や息苦しさを何度も経験すると、つらい発作から一刻も早く開放されたいと感じますよね。 自分ができる対策でパニック障害を治せるなら試してみたいと思うでしょう。 しかし、パニック障害と自己判断したり、症状の自覚があるのに受診せず自力で対処しようとすることはさまざまなリスクがあります。 この記事では、パニック障害の特徴や治療について詳しく解説しています。 医療機関を受診する目安も紹介しますので、参考にしてみてください。 パニック障害を正しく理解し適切な治療・セルフケアをおこない、いま悩んでいるつらい症状を軽減させましょう。
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目次

パニック障害は自力で治せるの?

パニック障害のような症状がある場合、まずは医療機関を受診することが大切です。

医師がパニック障害と判断した場合、専門的な治療が必要になります。

パニック障害は自然に治ることが少なく、症状があらわれているにもかかわらず対処しないで放置していると、症状悪化につながるケースがほとんどです。

そのうちよくなるだろうと軽く考えていると、かえって回復しづらくなります。

医師の指導のもと、治療を受けながら生活習慣の改善を心がけたり、不安をやわらげるためのセルフケアをおこなったりして早期から対処することが大切です。

パニック障害とは?特徴と原因を知ろう

パニック障害とは、不安障害という精神疾患の一種です。

前ぶれもなくいきなり動悸や息切れなどの身体症状や、強い不安などの精神症状を呈するパニック発作を繰り返します。[1]

パニック症状を改善するためにも、パニック障害の症状や原因を正しく理解しましょう。

原因やメカニズムを理解すると自分に合った対処法を見つけやすくなり、早い回復へとつながります。

パニック障害の主な症状

パニック障害の症状は、動悸や息切れ、手足の震え、吐き気、めまいが急にあらわれて、激しい不安や死の恐怖が襲ってくる「パニック発作」が特徴的です。[1]

パニック発作は前ぶれなく起こり、数分でおさまることもあれば長いときは30分ほど続くこともあります。

発作中はつらい症状や強い不安を感じるため「このまま死んでしまうのではないか」と感じてしまうことも少なくありません。

パニック発作が繰り返されるメカニズム

パニック発作が繰り返される原因は明らかになっていません。

考えられる原因の一つとして、「発作そのものへの恐怖」や「ストレスや生活習慣の乱れ」などが挙げられます。

一度パニック発作を経験すると「次はいつ発作が起きるのか」という発作を恐れる「予期不安」が強まります。

日常的な不安や緊張は、パニック発作を起こしやすくなり悪循環につながる可能性があります。

さらに不安が強まりストレスもかかることで、電車に乗る、人混みに行く、遠出するなど特定の状況を避けるようになります。

行動範囲がどんどん狭まり、日常生活にも支障をきたします。

予期不安による日常的な不安と、パニック発作の原因であるストレスや生活習慣の乱れが組み合わさることで、発作を繰り返しやすい環境になってしまいます。

自力でできるパニック障害への対処法はある?

パニック障害や発作の再発を防いだり、改善していくためには医師の指導のもと治療を受けましょう。

そのうえで、日常生活のなかで取り入れられる以下のセルフケアによって症状の緩和や改善が期待できる可能性があります。

  • リラックスを促す呼吸法

  • 不安な思考に気づき、受け入れるためのマインドフルネスと瞑想

  • 認知行動療法(CBT)

  • 生活習慣の改善

ただしこれらの方法はあくまで補助的な手段です。

治療を続けても改善がみられない場合は、早めに医師に相談することが何より重要です。

①呼吸法:過呼吸を落ち着かせ、リラックスを促す

強い不安や緊張を感じるとき、急な息苦しさや動悸があるとき、手足のしびれを感じたときにはゆっくりとした呼吸を意識しましょう。

パニック発作時には、緊張や不安から過呼吸になりがちです。

深い呼吸をおこなうことで心拍数が安定し、自律神経が整いやすくなりリラックス効果を高められます。

腹式呼吸

仰向けに寝た状態で片手を胸、もう片手をお腹に置きます。次の手順でおこないましょう。[2]

  1. 4秒かけて鼻からゆっくり息を吸い込み、お腹が膨らむのを感じる。

  2. 6秒かけて口からゆっくりと息を吐き出し、お腹がへこむのを感じる。

  3. 1~3を数回繰り返す。

腹式呼吸を数回繰り返すと、呼吸が整い不安な気持ちも落ち着いていきます。

箱呼吸(四拍呼吸)

腹式呼吸のほかにも、箱呼吸という呼吸法を日常的に取り入れると緊張をやわらげられます。

  1. 4秒かけて息を吸い込む。

  2. 4秒息を止める。

  3. 4秒かけて息を吐き出す。

  4. 4秒息を止める。

1~4の手順を繰り返すと次第に気分の高まりが落ち着き、リラックス効果があります。

2つの呼吸法を試して自分にあった方法をおこなうのがおすすめです。

発作が起きていない状態であっても日常的に深い呼吸を心がけると、発作時にも自然にゆったりとした呼吸をおこなえます。

②マインドフルネスと瞑想:不安な思考に気づき、受け入れる

不安をやわらげ、パニック発作を防止する方法として「マインドフルネス」と「瞑想」があります。[3]

マインドフルネスとは常に「いまのこの瞬間」に意識を集中させることです。

パニック障害の人は、過去の後悔や未来への不安を想像してつい不安にかられてしまいがちです。

過去や未来から一歩離れて「いま」を十分に感じることで、心の落ち着きを取り戻す効果が期待できます。

瞑想は、過去や未来から離れて落ち着いた気持ちを取り戻すための方法の一つです。

パニック発作による不安や恐怖から一歩引いてみることで、振り回されずに受け流す力を育てられます。

呼吸瞑想

呼吸瞑想とは呼吸に意識を向けて心を落ち着かせる方法です。[4]

楽な姿勢で座り、目を閉じて呼吸に集中します。呼吸にあわせて感じるお腹や胸の動き、空気の流れなど体の感覚に注意を向けましょう。

途中でほかの考えや感情が浮かんでくると思いますが、そのたびに思考が浮かんできているという事実に気づき手放すような感覚で呼吸へ意識を戻します。

慣れるまでは難しく感じるかもしれませんが、数分からでも十分効果があります。習慣として続けてみましょう。

ボディスキャン瞑想

ボディスキャン瞑想は体の緊張をほぐしリラックス効果が期待できる方法です。[4]

仰向けに寝て目を閉じた状態で呼吸をゆったりとしながら、足先から頭のうえまで体の各部位に順番に意識を向けていきます。

体の各部位の感覚をじっくりと感じていくなかで違和感や痛みなどの感覚に気づく場合もあるかもしれません。

どのような感覚に気づいても無理に消そうとせずに、ありのままを受け入れるのがポイントです。

③認知行動療法の要素を取り入れる:思考パターンを見直す

認知行動療法は、パニック障害の治療において効果が高いとされる心理療法の一つです。

認知行動療法では「現実の受け取り方」や「ものの見方」を整理して、ストレスに対して強い心を育てるために思考や行動を変えていくことを目的としています。[5]

まずはストレスや困ったことにぶつかったときに、パニック発作を引き起こす考え方のクセがあることに気づくことから始めましょう。

考え方のクセを少しずつ直すことで、生きづらさや不安をやわらげられます。

基本的には医師やカウンセラーと一緒におこなうのがよいとされています。

そのため自力でおこなうには限界があることを知っておきましょう。

日記をつける

日記をつけると思考や感情を整理でき、振り返ることで行動の改善にもつながります。

パニック発作や不安を感じたときに、以下の項目についてメモしておきましょう。[6]

  • どのような状況だったか

  • そのときにどのような考えが浮かんだか

  • どのような身体的な反応が出たか

日記を見返すことで、自分がどのようなパターンで不安を感じやすいのか傾向がわかります。

あらかじめパターンに気づくことで、対策のヒントが得られるようになります。

思考の検証

日記に書いた自分の思考に対して「思考方法は本当に正しいのか?」と問いなおすのも効果的です。

たとえば「心臓がどきどきしてこのまま死んでしまうかも」といった考えが浮かんだときは上記のように自問自答し、自分の思考に対して客観的な視点を向けていきます。[1]

  • 本当に死んでしまう証拠はあるのか?

  • 過去にも似たような状況で同じ感情をもったけれど、実際どうだったか?

  • ほかにより現実的な可能性はないか?

思考のクセに気づき少しずつ修正していくことが、不安に飲み込まれにくくなる心のトレーニングにつながります。

④生活習慣の改善:心身の健康を土台から支える

規則正しい生活習慣は心と体を健康的に保つためにとても大切で、パニック障害の症状をやわらげます。

リズムが整った生活、バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠など基本的なことを見直すだけでも、不安感がやわらぎ心も落ち着くと感じる人が多いです。

規則正しい睡眠

毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる生活を心がけることで、自律神経のバランスが整い質の高い睡眠をとれます。

睡眠は心と体をリセットするのに大切な時間です。リラックスして心身の緊張をほぐすために以下の環境づくりを意識しましょう。[7]

  • 寝つきをよくするために就寝1~2時間前にお風呂に入る

  • 寝る1時間前からパソコンやスマートフォンの使用を避ける

  • 室内照明を弱くして光の量を減らし暗い環境で眠る

  • 朝日を浴びて体内時計をリセットする

バランスのとれた食事

栄養バランスのとれた食事を心がけると脳内の神経伝達物質が安定するため、不安感がやわらぎパニック発作を起こしにくくなるとされています。

たんぱく質・ビタミン・ミネラル・炭水化物などをバランスよく取り入れることが基本です。[8]

カフェインやアルコールは神経を刺激しやすく、不安感を増やしたり睡眠の質を低下させたりする可能性があるため摂取は控えめにしましょう。

適度な運動

ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、ストレス解消や気分の安定に効果的です。

体を動かすことで幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌が促され、リラックス効果も得られます。

ただし体調がすぐれないときや不安が強いときは、無理のない範囲でおこないましょう。

激しすぎる運動はかえって発作を引き起こすこともあるため注意が必要です。

医療機関への受診を検討すべき目安

以下のような状況がみられる場合は迷わず精神科や心療内科を受診してください。

  • パニック発作が頻繁に起こり、日常生活に支障が出ている

  • 「また発作が起きるかもしれない」という強い予期不安で、特定の場所に行けなくなるなど行動が制限されている

  • 症状が悪化しているように感じる

  • ほかに精神的な症状(抑うつ、強い不安など)があらわれている

  • 仕事や学業、人間関係に支障が出ている

医師に相談し、必要に応じて薬物療法や認知行動療法などの治療を始めることが、パニック障害の克服への近道となります。

治療は早ければ早いほど、回復もスムーズになることが多いです。まだ大丈夫だろうと我慢せず、早めに医療機関を受診しましょう。

医療機関での治療法は?

医療機関での治療は「薬物療法」と「認知行動療法」の2つを組み合わせて、患者の症状や程度にあわせながら進めていきます。

薬物療法

パニック障害に対しては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬が第一選択薬とされています。[9]

SSRIは脳内のセロトニンのはたらきを調整し、不安やパニック発作を起こりづらくする効果が特徴です。[10]

日本うつ病学会の治療ガイドラインでも、SSRIの有効性が示されており科学的にも認められています。[11]

SSRIは薬を飲み始めてからすぐに効果が出てくるわけではありません。

効果が出るまでに少なくとも2~3週間、場合によっては6週間かかりますが、効果の持続性や依存性が低いためよく治療に利用されています。[12]

そのほかにあわせて使用される薬として発作時の不安をやわらげる抗不安薬が処方されるケースもあります。

医師の判断のもと、症状にあった薬を適切に使うことが大切です。

認知行動療法

認知行動療法は、医療機関でもパニック障害に対してよく用いられている治療法です。

認知行動療法では「発作が起こるかもしれない」という思い込みや不安を少しずつ見直し、現実的で前向きな思考パターンを身につけるトレーニングをおこないます。

国立精神・神経医療研究センターの調査によると、認知行動療法をおこなうことでおよそ70%の患者に症状の改善がみられたとされています。

薬を使いたくない人や副作用に不安がある人に有効な治療法です。

まとめ:「パニック障害かも」と思ったら医療機関に相談しよう

パニック発作を軽減するために最も大切なのは、自分の状態を正しく理解し必要に応じて医療機関への助けを求めることです。

あせらずに根気強く治療に取り組みながら、セルフケアを取り入れてみるとよいでしょう。

治療を受けても改善がみられない場合や、日常生活に支障が出ている場合は精神科や心療内科を受診する一つの目安です。

適切な治療とサポートは回復への近道です。つらいときには一人で抱え込まず、医療機関に相談しましょう。

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参考文献

[1]パニック障害(パニック症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)

[2]腹式呼吸と自然呼吸の相違による自律神経への影響

[3]不安障害の成人に対するマインドフルネスに基づくストレス軽減とエスシタロプラムの比較:ランダム化臨床試験

[4]「マインドフルネスに基づくストレス低減プログラム」の健康心理学への応用

[5]うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)

[6]対人援助職者に対する認知療法によるストレスマネジメントプログラムの効果

[7]知っているようで知らない睡眠のこと

[8]精神栄養学って知っていますか?

[9]パニック症はどこまで薬物療法で治せるのか

[10]不安症治療におけるSSRIの作用機序の神経科学的理解

[11]日本うつ病学会治療ガイドライン

[12]うつ病治療におけるSSRIの意義

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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  • 自傷他害のおそれがある場合
    • 自分を傷つけたいと思う
    • 具体的に死ぬ方法について考えている
  • 身体疾患が強く疑われる場合
    • 高熱がある
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    • 意識がない
  • 緊急性が認められる場合
    • ここ数日の間で急激に状態が悪化している
    • 食事や水分をとることができない
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